1982年生まれ、キム・ジヨン(日本語訳・小説)

82年生まれ、キム・ジヨン

すでに映画化されて日本でも公開されており、わたしも映画をすでに見たのですが、まずは本の感想から綴っておこうと思います。わたしは日本生まれの日本育ち、日本でずっと暮らしている日本人なのですが、キム・ジヨン氏と同じ1982年生まれです。1982年生まれということが同じなだけで、生まれてからこれまでに韓国は環境の変化がすごく早く、大きかったことも読んでいると伝わってきます。それなのに、読んでいて本当にチクチクと自分や自分の周りの誰かのことを描いているのだろうか?と迫ってくるものがあります。かなり辛く、そしてなんの解決もしないまま終わっていきます。なんだこのもやもやは、、、と思いましたが、そこから自分がなににこんなに打たれているのか、考えるきっかけになりました。

そしてこれを映画化するって・・・?と。さらには日本での映画広告につけられたコピーも、違和感がすごく、でもこの違和感こそがこの本から感じる辛さの象徴だな…と感じました。率直に言って、わたしはこの種の辛さを、これから大人になる女性たちに味あわせたくないです。が、おそらくなかなか脱却が難しい。生きにくさを内包していて、それが現状と全く合っていない社会システムにかなり影響を受けていることに当の女性の多くが多分気づいていないし、さらには男性たちはさらに気づくのが難しい気がします。おそらく気付きたくないことだろうから。

この本を訳している斎藤真理子さんが、映画化にあたり書かれていた解説は映画を見るか迷っていたけどやっぱり見ることにしたきっかけなので、リンクをはっておきます。

2倍味わう! 原作小説と映画を徹底解説|『82年生まれ、キム・ジヨン』|斎藤 真理子|webちくま(1/2)

わたし個人としてここ数年くらいフェミニズムについて考える機会が特別増えています。今年に入って「愛の不時着」をきっかけに韓国のドラマを見るようになり、その文化に触れるようになって、ますます考える機会が増えました。韓国のドラマで描かれる女性たちの姿は、異国の話と割り切れないほどに自分が日本で感じている「女性」として生きることの難しさと近似しているからです。共感するとともに、日本の女性だったら絶対に反論しないだろうと思うところで、きちんと言葉にして相手に反論する姿が描かれていることもあり、そうか、、、反論してもいいのか、、、と思ったりすることもしばしば。最初は、

女性なのにこんな子どもみたいに大きな声出してつかみ合いの喧嘩してるのみっともない、、、

と、思っていました。でも、今となってよくよく考えるとこんな考えが自然に浮かぶこと自体、”なんの根拠もない「女性はかくあるべし」という教育”に自分が毒されている証拠だなと。

自分の方針として、言葉を使って対話できるし相手の意図を汲み取ることができるのに、大きな声や暴力による圧力で物事を無理やり思ったとおりにしようとするのはダサい(男女問わず)

というのがわたしの本意だし、男性だからつかみ合いしたり大声を出して喧嘩してもみっともなくないとは思っていないのです。そんなことを考えているときに、韓国でのフェミニズムの現状についての記事で、KPOPのアイドルがこの本を読んでいると発言しただけで炎上したという記事を読み、日本語訳を手に取ったのがこの本を読むきっかけでした。

韓国は、男性に兵役があるので、日本とは価値観や社会での「男女の違い」についての現状がまた違うものがありわかっていないところもあるだろうとは思います。ただ、「ものを言わないと変わらない」という姿勢については、日本の女性は頑張って真似する必要があると強く感じています。大きな声を出してつかみ合いの喧嘩をしてでも守りたいアイデンティティを持つっていう生き方をしていいし、待っていても変わらないのはもう嫌というほど味わっているので。

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